2012年御翼5月号その2

タイタニック号沈没100年(1912年4月15日)

 1912年、1500名が犠牲になったタイタニック号の悲劇は、いくつもの人為的なミスや、利益を優先したための意図的な過ちが重なって起きたものだった。

  1. デッキを美しく見せるため、かさばる救命ボートの数を減らした(最大3500名の定員に対し、1178人分の救命ボートしかなかった。当時、大型客船が短時間で沈没するような事態は想定されていなかった。)
  2. 内装を豪華にするために、海水の浸入を防ぐ隔壁の高さを1.5m低くした。
  3. 通信士は、無線会社からの派遣であり、船会社の者ではなかった。彼らは、他の船舶からの流氷群の警告よりも、乗客の電報発信業務を優先させていた。電報の数が収入に結び付いていたからである。
  4. 近年、海底のタイタニック号が発見され、船体の一部が引き上げられた。すると、使用されていたリベット(鋲)が、建造コストを引き下げるために、粗悪品が使われていたことが分かった。そのため、氷山に接触した際、リベットが引きちぎられ、チャックが開くように幅2cm×長さ90mの細長い穴があいてしまう。これが約2時間という短時間で沈没する要因となった。


 豪華さや収益増大のために安全性が軽視されていたため、タイタニックは沈没したと言える。このような事故や事件が起こると、神はどこにいたのか、と問いたくなるものである。しかし、神は、乗客を救うために犠牲になった乗組員や、現場にいたクリスチャンたちの中に、確実におられたのだ。
 タイタニック船内の照明は、沈没の2分前まで点いていたという。船底では、300人のボイラーマンたちが働いていたが、その殆どが、発電機を回すため、最後までボイラーを稼働させ続け、船と共に沈んで行った。また、船が沈むまで、楽団は演奏を続け、最後に演奏したのが讃美歌320番「主よ、みもとに」だったと、生還者たちは証言する。タイタニックの事実が書かれているとして最も信頼されている本によると、確かに、楽団長のウォーレス・ハートレー氏は、乗客たちがパニックにならないよう演奏を続け、彼の愛唱讃美歌が讃美歌320番だった。楽団長ハートレーは、自分の葬式には、「主よ、みもとに」を演奏して欲しいと言っていたという。事故から約4時間後、危険な氷山海域を抜けて遭難地点に到着し、タイタニック号の救命ボートに乗っていた706名を救助したカルパチアのロストロン船長もクリスチャンであった。救助に向かう際、ロストロン船長が席を外し、物陰で一人静かに頭を下げ、長い時間祈る姿が目撃されている。
 タイタニックの1500名余りの犠牲者たちは、氷点下二度の海に投げ出され、その殆どが低体温症で亡くなっている。その中に英国人のジョン・ハーパー牧師(39歳)がいた。彼は救命胴衣で浮いている間、海上を漂う人々のところへ次から次へと行き「あなたは救われていますか」とイエス様の福音を宣教した。そして、救命胴衣を着けていない男性がいたので、自分の救命胴衣を渡し、「主イエス・キリストを信じなさい。そうすれば救われます」と言い残して、冷たい海に沈んでいった。男性は、海に投げ出された1528名の内の、救助された僅か6名の一人となり、キリストを受け入れたという。
 ジョン・ハーパーは、1872年スコットランドのクリスチャン・ホームに生まれ、13歳で受洗、17歳のときには製粉所で働く傍ら、街頭で説教を始め、後に教会を始め。彼は、シカゴの教会で伝道集会の説教をするため、6歳の娘ニーナと共にタイタニック号に乗ったのだった。船が沈み始めると、娘だけを救命ボートに乗せた。そして「また会えるからね」とだけ娘に言い残し立ち去る。その目には涙が光っていた。妻は3年前に病死しているので、ニーナちゃんは孤児となってしまうからである。そして、海に投げ出されてからも宣教し続けたのだった。
 ハーパーの英雄的な行為は、突発的に起こったことではない。まず、彼は生前、何度かおぼれかけている。2歳半のとき、井戸に落ち、母親に人工呼吸してもらい蘇生した。26歳のとき、潮に流され、おぼれかけた。そのときのことは、彼は「死への恐れは全く感じなかった。突然死ぬことは、突然、栄光が与えられることだと確信している」と語っている。また、32歳のとき、地中海で乗っていた船が浸水し、死に直面した。これらの体験を、神は彼が最期に体験する出来事に備えるために用いられたのだ。ハーパーは救命胴衣を手渡すとき、「わたしのことは心配しないで。下に沈んだ後、天にまで昇りますから」と言ったという。娘のニーナちゃんは、救命ボートからタイタニックが沈んでいくのを目撃していた。照明が消え、おぼれていく人たちの叫びを聞いたのを覚えているという。彼女は救助船で英国に戻り、父の兄弟たちに育てられ、スコットランドの牧師と結婚、1986年に80歳で天に召されている。(タイタニック沈没は、100年前のきょう4月15日、日本時間で午後3時20分)
 イエス様は、「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」(ヨハネ15:13)と言われた。神の霊に導かれ、このイエス様の姿へと次第に近づかせていただく者が、本物の信仰を持つ者である。

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